ですが、医者が「充分な休養を取るように」と言うほど無理をしている時に、わざわざ私と連絡を取ってまで話しがしたいのですから、話題はそれだけではありません。 話を聞き終わった後で、何を言っていいか分からないほど考え込まされるような話題が必ずと言っていいほどありました。 どうしても自分で納得がいかなかったり、何をどう考えていいか分からなかったりした、彼女にとって「消化不良」な出来事についてです。 私にとっては彼女を私の方に振り向かせ、2人の「差」を埋める為にも「消化酵素」になるような気の利いた意見の一つでも言いたいところですから、必死に頭から言葉を絞り出しました。 今考えればろくに人生経験もないくせに、人生相談で「すっきり解決」できるような名解答をしようとしている訳で滑稽もいい所です。 ですが彼女は何度かに1度、私の言葉に俯いて何も言わなくなるほど考え込む事がありました。 ですが、本当に「消化酵素」になったような言葉は、決して意識して出したものではなく、反射的に口をついて出てきたような言葉の中にあったようです。 後でS.S.に言われても、「そんなことを言った気がするな」程度の記憶しかない言葉ほど、彼女の記憶には深く残っていました。 何年も後で彼女の口から、「辛かった時期にあなたの言葉で随分と救われたのよ」と言われた事がありましたが、当然、実感は全くありません。 ボクシングに例えるなら、ろくな練習もせず、試合ではクリーンヒットでのポイントを全く稼げなかったのに、「ラッキーパンチ」を放ってダウンを奪ったようなものです。
彼女だっていつもそんな事だけを期待していた訳ではないと思います。 同年代の友人と話をする機会は殆どないので、同い年のたわいもない生活の一端に触れ、日常生活で溜まったものを吐き出せればそれだけでも充分だったのかも知れません。 ですが私はラッキーパンチを放つことばかり考え、思うようにならない事を悔しがってばかりいました。
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