2011年2月17日木曜日

自信 (トラウマ)

部屋には時計もないので、どれ位時間が経ったか全然分かりません。 服を着るとき、急にその時間が気になり出しました。  『あっという間』に終わってしまったような気がしてきたのです。 部屋の外では親方を始めとする仕事仲間が待っています。 「あれ、もう終わっちゃったの?」と冷やかされそうで、気が気でならなくなりました。 急に動作が鈍くなった私を見て
「どうしたんですか? 何かあったんですか?」
と尋ねられましたが、ちょいの間なのに、「早く終わっちゃったから、恥ずかしくて出て行きたくない。」とも言えません。
「いや、何でもないよ。」
そうは言ったのですが、着替え終わっても出て行こうとしない私を見て変な顔をしています。
「お友達が待っているんでしょ?」
彼女はそう言って私の手を引きドアを開けました。 「そのお友達と顔を合わすの、もうちょっと後にしたいんだけど・・・」 と思ったときにはドアの外に押し出されてしまいました。 仕方がないので「ゆっくり」と待合室まで歩いてゆくと、私と一緒に部屋に入っていった親方の倅も席に座って私を待っていました。 溜まっていた上に異常に興奮して、「あっという間に終わった」訳ではなかったようです。 私はホット胸を撫で下ろしました。
「じゃあ、帰ろうか?」
そう言って、みんなが席を立つと、例の中国人らしい男が、
「あと2人、大丈夫ですよ、直ぐに準備できますから、うちはみんな『いい子』ですよ! 折角来たんだから!」
と熱心に説得を始めました。
「馬鹿言うな!」
1人が捨て台詞を吐き捨てて入口のドアを開け、さっさと出て行き、他の者もその後を付いて出て行きました。
「日本じゃこんな安くできないよ! うち、とっても安いね! 又来てね!」
本当に困ったオヤジです。
この時、私は普通にセックスができていた事に気付きませんでした。 以前のように「起たなかったらどうしよう」「中折れしたらどうしよう」なんで全く考えませんでした。 又、3年近く前にトルコ風呂に行ったときには、クンニリングスというものをしてみたくて仕方がなかったのですが、頼む勇気もありませんでした。 この日はただ、目の前にいた女性を見て興奮し、勢いと本能のままにしたいようにしただけでした。 
この3年間に何があったかと言えば、「インポテンツ」とか「女性コンプレックス」の事など殆ど忘れ、ひたすら仕事に打ち込んでいただけだったように思います。 勿論、食事には気を付けていましたし、マスターベーションもしていました。 ですが、そのマスターベーションも、以前のように勃起を維持する為にあれこれ工夫したりしていた訳ではなく、急にムラムラして何も手に付かなくなるから、仕方なしに「処理」していただけで、大小便の「排泄」と似たようなものでした。
ただ一つ、大きく変わった事は、仕事に対してだけは「自信」を持った事です。 本来、腕によい職人になるには、10代前半の頭の柔らかい時期に、考えたりせずに「身体で覚える」ものです。 私が真面目に覚えようと決意したのは20歳の時でしたから、遅いスタートでした。 それでも5〜6年続ける事で、自信を持てるレベルにまでは到達できたのです。 「インポテンツ」が治った直接の理由ではないかも知れませんが、全くの「無関係」ではなかったと思っています。



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