2011年2月23日水曜日

きっかけ (トラウマ)

こんなやり取りがあってから間もなく、K.O.ちゃんはまたJA研究所に来ました。 よく来ている化粧品販売グループの中では最も若かった事もあり、リーダーからも可愛がられていたようです。 このリーダーはちょっとヒステリックで自分勝手な所がある女性でしたが、面倒見がいいのか口が上手いのか、部下からは慕われているようでした。 このグループの人間に言わせると「人望」があるからなのだそうですが、端で見ている人達の中で、それに心から相づちを打つ人はいなかったように思います。
JA研究所の料金体系はちょっと変わっていました。 基本料金は年々上がっていました。 この基本料金というのは、初めてトレーニングを受ける人の1ヶ月分の料金です。 25日にトレーニングを始めたら、翌月の24日までのトレーニング期間に、朝10時から夜10時まで都合のよい時間にトレーニングを受ければよいのです。 私が初めてトレーニングを受けたとき、13万円だった基本料金はこの時28万円まで値上がりしていました。 需要があっても、供給が間に合わないので、敷居を高くする事で客の数を制限しているのです。 ただ、常連は旧料金のままだったりもして、そこいら辺はK.A.先生が判断します。 この当時、私は確か18万円だったと記憶していますから、精一杯の「先行投資」だった訳で、投資が「回収」でき始めたのもこの頃です。
K.A.先生はよく、「『酒、女、麻雀』を覚えて、何の役にも立たない『卒業証書』を貰うだけで何千万も大学に払ったり、治りもしない『名医』の治療を何年も受け続けて、何百万、何千万も払う事を考えれば、うちはちっとも高くない。」と言っていました。 ですから、JA研究所のトレーニングを受けようと思う人は、その価値観を受け入れられた人だけだと思います。 
基本料金は28万円でしたが、どうしても払えない人や、地方から短期でしか来られない人の為に1週間コースなどもありました。 余り利用者はいませんでしたが、10万円以上していました。 私が10万円分を負担し、K.O.ちゃんが残りを自分で負担して、その1週間コースに通う事でいいかとK.A.先生が尋ねてきたので、二つ返事でOKしました。 とにかく、何でもいいから「きっかけ」を作らない事にはどうにもなりませんし、中途半端なプレゼントよりは「一生役立つ」プレゼントの方が喜ばれるはずです。 自分の体験からも自信を持って役立つ事を保証できます。
仕事を終え、夕食も採らずに急いでJA研究所に行っても、終バスに間に合わなくなるのでK.O.ちゃんはトレーニング終了時間間際です。 トレーニング中もろくに話は出来ませんでしたから、駅まで送る時間だけが、唯一まともに話をする事が出来る時間でした。 最初、K.O.ちゃんはとても済まなそうにしていました。 ろくに話をした事もない男から、いきなり10万円もするプレゼントを貰えば、当然かも知れません。 ですが、当時のバブル経済日本を席巻していた「ルイ・ビトンのバック」や「カルチェのリング」などに比べれば、遙かに価値のあるものだと思っていましたし、5万円の豪華で役に立たないプレゼントよりは、10万円だろうが20万円だろうが、役立つものを人に贈るべきだ常に思ってから、その事だけは伝えました。 この点は彼女もそう考えていたようで、話が合いました。 ですが他の事は、一緒に食事をしたときと同じで、彼女が一方的に話を振ってきて、私はただそれに答えるだけでした。 そして駅で別れた直後でも何を話したのか、殆ど思い出せないほど毎回「上がって」いました。 せっかく作った「きっかけ」を殆ど生かせないまま、あっという間に1週間が過ぎてしまいました。
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