2011年2月3日木曜日

K.I.さん夫婦 (トラウマ)

このK.I.さんは既に結婚していましたが、とてもきれいな奥さんでした。 端から見れば美男美女の縁組みですが、性格がK.I.さんとは正反対でした。 美人だから周りからチヤホヤされてきていたのでしょう、とても「高ビー」な女でした。 旦那が友人を連れてきてもお茶の1つも入れられません。 話が盛り上がっているときにいきなり、
「そろそろ遅いですから、私達そろそろ寝ますので。」
と追い返されてしまいます。 サラリーマンの家庭なら、それでいいのかも知れません。 ですがK.I.さんは1〜2年後には実家に帰り、長男として家業を任される立場なのです。 その際は工務店、施主、同業者、自社の職人など、多くの人が出入りして、公私ともに付き合う事になるというのに、お茶の1つも入れられないような女房ではどうにもなりません。 ただ単に「お付き合い」が出来ないだけでなく、「てめえの女房もまともに躾けられないで、まともな仕事が出来るか。」と周りから見下されてしまいます。 増してK.I.さんの実家は東京ではなく、当時未だ「男尊女卑」の風習が残っていた九州地方なのですから、友人は皆、口を揃えて彼に忠告をしていました。
彼がDSでの修行を終え、数ヶ月後には実家へ帰る事も決定した頃の事です。 以前から話を進めていた奥さんの実家の屋根の葺き替え工事を手伝いに行きました。 大屋根、下屋、共に下り棟と棟に鬼飾りを取り付けました。 下地も宮大工に頼んで掘ってもらったので、小さいながらも滅多に見る事の出来ないとても凝っている、見事なデザインでした。 私もこの製作を手伝わせてもらいましたが、とても勉強になりました。 その日の仕事を終え、家の中に上がって一休みさせてもらいました。 その日、奥さんは前日から泊まり込みして、朝はかなり遅く起きてきて、妹とパン作りをしていました。 K.I.さんが
「お〜い、○○子、△△君(私の事)にお茶入れてくれるか〜。」
「私に命令しないで! 私は奴隷じゃないの! お茶なら自分で入れればいいじゃない! 私は今、忙しいの!」
普段、何を言われようと何も言い返さないで笑っているK.I.さんですが、この時は一瞬顔色が変わりました。 お義母さんが代わりにお茶を入れてくれましたが、K.I.さんの顔は引きつり、いつものような笑顔はありませんでした。 お茶を一気に飲み干すと、
「帰ろう!」
そう言うなり立ち上がり、
「お邪魔しました。」
と出て行きました。
お義母さんは案外のんびりした人で、
「あらあら、夫婦げんか? やるなら他所でやって欲しいわね。 わざわざうちに帰ってきてやらないでくれる?」
と笑いながら自分の娘に向かって言ってました。
「喧嘩なんかしてないもん。 勝手に怒っているだけよ! 馬鹿みたい。」
「お姉ちゃんが悪いんじゃない。 お義兄さんは、休みの日にうちを直してくれているのよ。 旦那さんが仕事を終わって疲れているのに、遊びでパンを作っている私達が何もしてあげないのは失礼じゃない?」
「私達夫婦の事に、余計な口出ししないで!」

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