2011年2月2日水曜日

K.I.さん (トラウマ)

話は少し戻ります。 職業訓練校で知り合った友人の1人にK.D.さんがいます。 元々は石綿で出来た平たい瓦の職人でした。 ですが、拭き始めや拭き仕舞い、役物など、要所で板金加工が必要になるので、技術を覚えようと知人の伝手で訓練校に入学してきました。 当時の年齢が30代半ばで、確か私と11歳離れていました。 入学当初は40歳後半の同級生と親しかったのですが、実技実習の際、課題を作成し終えると、指導員から「もっときれいに作りなさい」と言われ、腹が立って1度作ったものを踏みつぶし、翌日から来なくなってしまいました。 現場では、仕上がりなどどうでも良いものなであれば大雑把でいいから早く作るべきでしょうが、「図面通り」の「正確」な製作を覚える為に製図を習い、実技実習を行っているので。 ですが「頑固職人」は
「俺はこのやり方で何十年もやって来たんだ。」
の一点張りで、人の話に耳を傾けません。 この人もそんな口でした。 私はあまりこの人と話をする機会がありませんでしたが、実技実習の際に、私の作業をよく見ていたようです。 後日、K.D.さんと酒を飲みながら、
「あいつは今時、珍しいほど基本から仕事を覚えている。」
と誉めていたそうです。 又、口は悪いけれど腹には残さない所とか、仕事に関してだけは言うだけの事はきちんとこなせる、昔ながらの職人気質を持っている私を、とても気に入っていたようです。 本当はとても気が小さく、大きな事を言って自分を追い込まないと何も出来ない事と、単にK.A.先生の真似をしていただけなのですが、周りの人間にそんな事は分かる訳ありません。
これまで努めていた板金屋が「面白くない」からと辞めてしまい失業状態だったとき、私は近所の板金屋DSが職人を募集している事をK.D.さんに伝えました。 その板金屋の先代は、数多くの寺社仏閣の銅板工事を手掛けた事で、叙勲され、TVのCMにも起用された事があります。 技術を覚えたいなら、決して悪い所ではない筈だと勧めたのです。 訓練校の授業が終わると、私はK.D.さんをDSにまで連れて行き、紹介しました。 K.D.さんはそこに努める事になりました。
私の父とDSの親方は、同業者組合で顔見知りでしたが、深い付き合いはありませんでした。 ですが、K.D.さんがDSに勤めるようになってから、頻繁に遊びに行くようになり、親方とも親しくなりました。 DSには私よりも1〜2歳上の若い職人のK.I.さんが現場を任されていました。 九州の実家から、知人を通じてDSに「修行」をしに来ていたのです。 仕事は非常に丁寧で、やる気に溢れ、何をするにも「真っ直ぐ」な好青年でした。 雑誌のモデルに使えそうな二枚目である事を除けば嫌な部分はなく、このK.I.さんと親しくなるにもあまり時間がかかりませんでした。 私はこのK.I.さんから、随分多くの技術を教えてもらいました。

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