そう言われてJA研究所から車で10分もかからない店で食事をしました。 K.A.先生は簡単に言いましたが、私にとっては「試練」でした。 言われた通りにこれまでの事を思い浮かべようとしたのですが、時系列に狂いが生じているのです。 前後関係が混乱してしまい、話がうまく組み立てられません。 まるで悪戯した事がばれた子供が、慌てて言い訳をすればするほど辻褄が合わなくなり、しどろもどろになっているみたいです。 それでも、JA研究所のトレーニングを受けたり、講演会に出席した際、たまにK.A.先生が私を例に挙げて話をした事があったたでしょうか、彼女の方で私の事を多少は知っており、口が重い私の代わりにあれこれと尋ねてきました。 私にとってはまさに「渡りに舟」でした。 たどたどしかったけれど気まずい「沈黙」が続くような事はなかったのです。 聞かれた事に答えているうちに食事が終わり、コーヒーも飲み終え、気が付くと結構な時間になりました。 アパートは立川駅からかなり離れており、終バスギリギリの時間が近づいたので近くの駅まで送り、まだ時間的に余裕があるのでもう一度JA研究所に戻る事にしました。 この時、何となく胸に圧迫感を覚え、息苦しくなりました。
JA研究所に戻った時には、この圧迫感は更に強くなり、立っている事が辛いので、横になりました。 夜11時頃までやっていましたから、まだ数名トレーニングを受けており、忙しい状態でした。 いつまでも胸の苦しさが治まらないので、トレーナーの1人に尋ねました。
「さっきから胸の圧迫感で息苦しいんです。 胸の周りを弛めて貰えますか?」
「あら、そんなに具合が悪いの? 折角、K.O.ちゃんとデートしてきたのに。 緊張しすぎたんじゃないの?」
トレーナーは笑いながら胸の周りを弛めてくれました。 私は気管支が弱く、ちょっと風邪をひくとするに気管支炎にまで発展してしまいました。 そんなときは胸の周りの筋肉をほぐす事で、咳はかなり落ち着きます。 特に腋の下から乳首に向かう太い筋と、脊柱の隣を平行に走る太い筋の肩胛骨下端を結ぶ高さの2箇所が堅くなっていると咳が激しくなります。 この日の症状はそれと似ていました。
「おい、どうしたんだ?」
K.A.先生がトレーニングルームに入ってきて、私を見るなり言いました。
「何だか、胸が苦しいんですって。」
と、トレーナーが答えました。
「緊張のしすぎだよ。 呆れた奴だな。 で、どうだったんだ? ちゃんと話せたか?」
「向こうから色々聞いてきたから、それに答えてたら結構時間経っちゃってて・・・ 駅に送っていきました。」
「何聞いてきたんだ? K.O.ちゃんは。」
「えっ?・・・ あまりよく覚えていません。 何話したか。」
「何だ、頭の中が一杯で、何も覚えていないのか? で、次は?」
「次って?」
「次のデートの約束だよ。 ちゃんと取り付けておいたんだろうな。 まさか、駅まで送って『さようなら』で別れてきたのか?」
「あっ、そういうものなんですか・・・」
「そういうものなんですかじゃないよ! 全く、いい歳こいて! 明日にでも電話掛けて、次のデートの約束取り付けておけ!」
「電話番号、知らないんですけれど・・・」
「あ〜ッ! 電話番号も聞かなかったのか? 本当に、1つ1つ世話の焼ける奴だな! おい、少し投資する気はないか?」
「え、何にいくらくらいですか?」
「K.O.ちゃんにトレーニング代出してやるんだよ。 学生だから金がなくて、前も1週間コースしか受けられなかっただろう。 それでも又トレーニングを受けたくて、ちょくちょく顔を出しているんだ。 今のところうちだけだろ? 2人の接点は。」
「別にそんなのは構いませんけれど・・・」
「じゃあ、又今度来たときに、俺が話を付けてやるから、ちょっと待ってろ。」
私は何となくホッとしました。
「それよりどうだ、さっきの胸の苦しみは?」
「えっ? あっ、治まっています。」
「当たり前だ、別に具合が悪くなった訳じゃなくて、慣れない緊張をしただけだ。 何とかなりそうだって安心したから、治ったんだ。」
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