2010年10月14日木曜日

高い技術を生かす (世代間伝播)

ですが、母にとってこれが面白くなかったようです。 私が気に入って購入した絵を持ち帰ると、気が狂ったように怒り出しました。 コレクションの枚数が増えるのに比例して母のヒステリーもエスカレートしました。 何故美術品購入をするのか理由をいくら説明しても全く聞く耳を持ちません。 今まで何とかやってきたのだからこれからも大丈夫で、私のように人と違う事をしてはいけないと言い出す始末です。 建築鈑金なんて、父の代ならこれまで通りのやり方でも何とかなるかも知れませんが、私の代になったら先行かなくなることは火を見るよりも明らかで、それは父も認めていまるす。 だから最初は継ぐ気がなかったのです。 ですが時代の需要に合わせた新しい仕事を創り出して行かなくてはならない事はどの業種に身を置いても同じでしょう。 そして、明らかに「時代遅れ」な業種に身を置く者は、他の業種の何倍もの生き残る術を模索し続ける努力を怠った時点でアッと言う間に没落してしまうでしょう。 逆に需要に合った物を創り出し、更には需要そのものを創り出して行けるようになれば、周りの同業者は手をこまねいて見ているだけなので売上を伸ばして行く事も不可能ではないはずです。 そして時代を先取りした物を作れるようになれば、人の見る目が違ってきます。 実際に口で言うような簡単な事ではないはずです。 K.A.先生は陶芸にも造詣の深かったミロの例をよく挙げて説明して下さいました。 新しい陶芸作品を作りたくても、表現する為の技術が伴わなければ高度な作品には仕上がらないので、腕のよい陶芸職人の元で修行をし、高度な技術を身につけたからこそ思い通りの作品を製作できたのだそうです。 
私はこの仕事を始めて3年目に職業訓練校に入学したとき、技術的にはすでに指導員に近いレベルにありましたし、卒業作品は全国の職業訓練校が出品する作品展の金属加工部門で最高賞も受賞しています。 卒業後、この業界では名人クラスの職人の元で修行もしていますから、技術的にはかなり高いレベルを身につけていたと自負しています。 その技術を更に追求する一方で、いかに生かしてゆくかが私の人生にとって最大の課題だったのです。

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