2010年10月4日月曜日

母の思い出 (世代間伝播)

母からよく聞かされた祖母の悪口の中でも繰り返し聞かされたことがあります。 祖母は母の妹、つまり叔母と母を連れて、あちこちの家を一軒一軒訪ね歩いては、「この子をもらってくれませんか?」と里親を探し回っていたときの話です。 祖母と離れたくない2人は「どこにも行きたくないよ」と泣きながら祖母の後をついていったそうです。 終戦後の貧しい時代ですからどこも自分の家族が食べてゆくだけでも大変なことで、他人の子供を育てる余裕などありません。 どこも相手にしてくれずに帰路をとぼとぼと歩きながらいつも必ず、「おまえ達がろくな子じゃないから誰ももらってくれないんだよ!」とこっぴどく叱られたそうです。
叔母さんの里親が決まった日、自分もよその家に貰われてしまわないかと不安になって、泣きながら祖母の後を追いかけた母は、祖母から石を投げつけられ続けたそうです。 「付いてくるんじゃないよ! お前なんか誰ももらってくれないんだから死んじまえ!」と罵られながら。
戦後の貧しい時代、女で1つで子供2人を育てるのは今からは考えられない苦労もあったはずです。 ですが幼い子供にとって、親から疎まれ、憎まれながら受ける仕打ちは辛い出来事だったと思います。 いくら酷い事をされても子供はやはり、よその家より自分の親と一緒にいる方がいいのでしょう、母は祖母に拒まれながらもずっと追い続けたそうです。 妹と引き離されてしまった事は、その悲しさや辛さに輪をかけたはずです。
1度、里子に出された叔母が逃げ帰ってきた事があったそうです。 母は大喜びして迎えたのに、祖母は叔母のことをこれでもかと叱り付け、さっさと里親の元に返したそうで、そのときの事を話す母の顔はいつも痛々しげでした。

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