「え~、俺には区別付かなかったよ。 沢山いるの、ハワイには?」
「沢山はいないけれど、珍しくもないよ。 俺は最初の一声で分かったけれど、お前じゃ分からないかも知れないな。」
「じゃあ、どうしたら区別付けられる?」
「地元の人間と一緒に行くしかないだろう。 『金髪・青い瞳・白人』 を珍しがっているうちは区別は付かないはずだ。」
確かに一理あります。 その日は諦めてアパートに帰りました。
その後、見習い職人とは一緒に遊びには行けませんでした。 1週間以上戻ってこない予定だった彼女が、2日後には帰ってきたのだそうです。 理由を尋ねても、
「う~ん、そんなに長い事あちこち遊び回っても、面白くないから・・・。」
と曖昧な答えしかしないのだそうです。
「勘のいい彼女だね。」
「ああ、頭は悪いくせにな。」
彼女の悪態をつく見習い職人の表情は、「勘」だけじゃなくて「力」もあり、既に尻に敷かれている事を物語っています。 とても誘い出す気にはなれませんでした。
「こうなったら、高くても構わない! さっさとしないと、何もしないで日本に帰る羽目になる!」
と、カラカウア通りに繰り出しましたが、今一つ気乗りしませんでした。 時間になってもトップランカーどころかミドルランカーすら現れません。 先日までは「前座」と馬鹿にしていたクラスの数すらも少なくなっているのは、恐らく取り締まりが厳しいのでしょう。 しかも、誰を見ても “She was a man.” という見習い職人に声が耳から離れません。 全員が「改造人間」に見えてしまうのです。
いくら性転換手術を行おうと、「骨盤」の形は男女で異なるから、腰の形を見れば男か女の区別は付くと聞いた事がありました。 きちんと「人体骨格図」や「人体骨格標本」を見ながら解剖学の勉強をちょっとでもしておけば、こんな事で悩まずに済んだはずですが、これまで特に必要性を感じなかったので、そんな事はしませんでした。 「知識」を「知識」のまま終わらせてしまい、実際に役立つ「智慧」にまで昇華させられない自分の愚かさを呪いましたが、「後の祭り」です。 カラカウア通りから少し離れ、比較的腰のラインがはっきりと見える服を着た女の子をじっと眺め、それからそこいら辺に突っ立っている男の腰をみて、違いを見いだそうとしましたが、男は「トイレットペーパーの芯」に、女性は「砂時計」にしか見えず、先日ダウンタウンで見たような「元男」はとても発見できそうにありません。 しかも、男女半々に見比べるべきなのに、気が付くと 1:9くらいの割合になってしまい、「女の尻をジロジロ眺めている日本人観光客」と化していました。 場所が悪すぎます。 アラモアナのストリップバーならいくら眺めても誰にも咎められませんから、場所を移動する事にしました。
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