2011年1月20日木曜日

成果 (トラウマ)

 K.A.先生は講演会の度に、そしてトレーニングでも頻繁に、「性力」の重要性を強調していました。 仕事ができる奴は間違いなく女性に強くて精力も強いと繰り返し聞かされていた私にとって、この日の経験は、私にこれまで以上の努力が必要な事を痛感させるものでした。 インポテンツだったのがかろうじてではあってもセックスができるようになった事は大きな前進ですが、何度も中折れする所を女性にリードされ、しかも手で射精寸前まで刺激してもらったから、やっとできたセックスです。 例え彼女ができたとしても、全てを正直に告げて、こんな事をしてもらわない限りはまともにセックスできないのでは余りに情けなさ過ぎます。 もしそんな事を受け入れてくれる彼女ができたとしても、今の私はその彼女に何もしてあげられないだろうなと考えた時、仕事はできない、女性の気持ちも理解できない私は何の価値もない人間に思えて仕方がありませんでした。
ですが、トルコ風呂に2回ほど行ってから約半年後、私は仕事に対しては多少の自信を持つ事ができるようになりました。 当時通っていた職業訓練校から出品した作品が、全国職業訓練校の卒業制作展の金属加工部門で最高賞を受賞したのです。 当時参加していた「板金加工技術研究会」という板金加工技術の保存・発展を目的とした同好会で覚えた技術を使い、一枚の銅板を半球形に加工した物を2つ作り、それを半田で繫ぎ合わせた1尺玉(直径約30㎝の球)を作りました。 その受台には龍の爪をイメージした物を作り、その1尺玉を握らせました。 さらに材木を加工しパテ盛りして、3色の人口緑青を塗布して苔生した岩のように加工して龍の手を指し込みました。 後で知った話ですが、将棋の「龍王戦」の祝杯も龍玉を象った似たようなイメージなのだそうです。 更に60㎝×1.2mの銅板に龍の打ち出しをして硫酸銅で古びをかけ、額縁には塩化第2鉄を使って銅板を赤錆色にしました。 自分で言うのも何ですが、レベル的には職業訓練校のレベルではなく、「腕自慢」の職人が製作するレベルにかなり近付いたものです。
ところが、出品前にK.A.先生に見ていただいたら、散々コケにされました。 玉台として作った龍の手は鱗や皮膚の質感がリアリティーに欠けており、自分が作りたい作品のイメージが今一つ不鮮明である事と、作品として表現する為の技術が未だ未熟であり自分の持つイメージを表現しきれない事。 「打出物」も龍の姿に動きがない中途半端な形であることや龍の表情にも龍の持つ迫力がないのは、画力と表現力に必要な技術が伴っていない事を指摘されました。 自分でも作っている時は自己満足に浸っていましたが、指摘された内容を自分の目で確認すると、欠陥だらけの作品に見えてきました。 確かに「満足」できるものではありませんでしたが、何処がどう悪いのか具体的には分かりませんでしたから、K.A.先生の指摘で自分の今後の課題がはっきり見えた事は大きな励みとなりました。 
後日、JA研究所のトレーナーから、
「K.A.先生、すごく誉めてましたよね。 貶しているようでも、あれが先生の褒め方だって分かりました? 天狗にならないようにきつい言い方してたけれど、ここまで努力して成長してきた事を、先生はとても喜んでいましたよ。 教えた事を素直に聞いて、コツコツやってきたからここまで来られたんだって言ってましたから、これからも頑張って下さいね。」
と言われた時、約3年、脇目も振らずにK.A.先生の指導通りに努力してきた事がやっと成果を出し始めた事が実感できました。 ずっと頭から離れなかった「成長」という言葉を、やっと自分のものにできたのです。

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