異文化に触れると、疑問に感じる事が沢山あります。 他所の国で暮らせば、文化、習慣、考え方の違う人達と接するのですから尚更です。 そして、長く暮らしていると、そういった疑問の大部分は少しずつ消えてゆきます。 ある疑問は理解できたから。 又、たとえ理解は出来なくとも、「当たり前」の事なので慣れてしまい、疑問を疑問とも感じなくなってしまった事もあります。
ですが、いつまで経っても一向に理解出来ずに懐き続けている疑問もあります。 その代表がエアコンの使い方です。
タイに来た事がある人なら分かると思いますが、思わず「寒い!」と声に出してしまう程ガンガン冷やします。 野菜なら、冷蔵庫に入れずにそのまま放置して置いても長持ちする筈です。 鳥肌が立つ事なんて、日常茶飯事です。
これはデパートや映画館に行ったり、長距離バスに乗った事がある日本人なら、誰でも感じる事ではないかと思います。 羽織る物を何も持たずに映画館に行って、クライマックスに差し掛かった時に、寒さに耐えきれずに出て来た事もありました。
映画館は途中で出てゆけばそれで済みますが、長距離バスだと途中で降りる訳にもいきませんから厄介です。 走行時間が8時間以上になるツアーバスの殆んどは夜行便で、夜出発して翌朝目的地に到着しますから、一晩中寒い思いをしなくてはなりません。 エアコンの排出口にトイレットペーパーを詰めてエアコンの風が当たらないようにする人が随分といますが、これをするとダクトの中に水が溜まり、あちこちから水が漏れて来ます。 ツアーバス会社によっては車掌が排出口を見廻り、何か詰め物をした人を注意して、詰めた物を取り出してしまいます。 御客がこれだけ寒い思いをしているのに、決してエアコンを切らない「嫌がらせ」のようなサービスをタイでは「VIPサービス」と呼びます。 身も心も芯まで冷える最上級のサービスです。
バス会社の説明では人が多数搭乗しているから、「換気」をしなければならないとの事ですが、エアコンは外気を取り込み、冷やして室内に送り込む訳ではなく、エアコンで冷やした空気を再度取り込んで冷やすから外気との温度差を大きくすることができる訳で、敢えて外気を取り込まない限り「換気」にはならない筈です。 もし外気を取り込んで冷やしていたら冷蔵庫のような寒さにはならない筈です。
多分、エアコンを切った時点で、看板の「VIPサービス」を降ろさなくてはならないから「意地になって」エアコンを使い続けているだけのように思います。 サービスは「自己満足」の為ではなく、「顧客満足」の為にあるのだと思うのですが、そんな風に考える人はいないのでしょうか? それとも、寒いのが好きな人の数が、寒いのは嫌だと思う人の数を大きく上回っているから、こんなサービスが存在しているのでしょうか?
どちらにせよ、私の理解力を超えたありがた迷惑なサービスに違いは有りません。 長距離バスの「VIPサービス」を利用する際は、「防寒着」が欠かせません。 忘れると風邪をひいたり、体調を崩します。 海外生活の基本は「自己防衛」なのです。
更に理解が出来ないのは、タイは例える「寒季」になっても、その寒さは日本と比べれば、大した事ありません。 部屋の温度をその気温よりも下げても何とも思わない人達が、寒季に入って気温が下がって来ると「寒い寒い」と大騒ぎする事です。
さすがに自宅だと「電気代が気になる」のでしょう、冷蔵庫みたいに冷やす人はそう多くは有りませんが、会社で自分の懐が痛まないとなれば、手加減はしません。 朝、始業時間と共にエアコンのスイッチを入れるのですが、設定温度を規則として決めておかない限りは何の迷いもなく「最強」に設定するので、事務所の中はあっという間に寒くなります。 寒くなったらエアコンを1度切るか、設定温度を上げればいいと思うのですが、何故かジャケットを羽織ります。 事務員の大部分がジャケットを羽織っても、誰もエアコンを切るなり温度を上げようとはしないのです。
私の派遣先の会社は数年前に設定温度を決めたそうですが、「使い始めだけだから」と、毎朝、設定温度より2〜3℃低めにして業務が開始されます。 「寒い」と感じている間は誰もエアコンのリモコンには触れようとしませんから、「設定温度」は事実上、「努力目標」に過ぎません。 本来、人事総務課がこういった事を取りし切らなければならないと思うのですが、人事総務課も設定温度より低い温度でスイッチを入れています。
改善提案は対費用効果も重視されますから、エアコンの設定温度を上げる提案をして、ジャケットなんか羽織らなくてもいいようにすれば電気代をかなり削減出来る筈です。 「改善提案」
で紹介した「銀の書類入れ」や「金の簿立て」なんか作るよりずっと良い提案だと思うのですが、周りに恨まれるのでしょうか? そんな発想をする者は誰もいません。
勿論、健康に良くない事、受け合いです。 事務員が風邪をひく原因の1つは明らかにクーラーの使い過ぎです。 私の思い過ごしか、体調が悪いのかなと感じて、「寒くない?」と誰かに尋ねると、殆んどの者は「寒いわよ。」と答えます。 でも「温度を下げ過ぎよね。」とは誰も口にしないのです。 逆に「寒いなら、ジャケットを羽織った方がいいわよ、風邪引くから?」と言われてしまいます。
10年暮らして、かなりタイ人の感覚を理解して来たとはいえ、未だ未だ分からない事だらけです。
エアコンと言えばもう1つ、寝る時に馬鹿みたいに寒くする女の子がいます。 寒いから抱き合って、互いに暖め合う、「粋なサービス」かと思いきや、寒いからと毛布に包まって、私に背中を向けてサッサと寝てしまいます。 余りに寒いので、寝ている事を確かめてからスイッチを切ったり、温度を上げたりすると、やっと眠れる温度になった頃、女の子が目を覚まして又寒くしてしまいます。 毛布しかない安ホテルだと、女の子がグルグルと包まってしまい、私が被る分がなくなってしまい、寒さが一段と身に凍みます。
タイ人と一緒に生活する時、「心地良い体感温度」は大切な相性の一つではないかと思います。
関連記事 改善提案
0 件のコメント:
コメントを投稿