翌週の月曜日、昼食時に彼と食堂で会いました。 私はいつものように経理課長と一緒に食事をしていると、
「ちょっと相談したい事があるから、食事が終わったら、話を聞いてくれないですか?」
この経理課長は年齢がまだ32歳ですが、タイ人からは非常に信頼を置かれている秀逸な人材です。 タイ仏教に対する理解も深く、精神的に追い詰められた約2年半前、自分ではどうにもならなくなったときに私が相談したのも彼でした。 今でもタイ上座仏教に関する事で分からない事がある時は、まず最初に彼に尋ねます。
食後、C.P.君が経理課長に見せたA4用紙は
「新車の見積書」
「新車の見積書」
でした。
「ずっと、買い換えようと思ってたんですよ。 5年払いだと、利子はどれ位になるんですか?」
私は思わず耳を疑いました。 先週、「借金が返せない」事が悩みの種だと訴えていたにも拘わらず、土日に自動車販売ディーラーに行って見積を取ってきたようです。
「どうでもいいけど、支払の終わってない自動車は、何処に『寄進』しても受け取ってくれないはずだぞ。 5年ローンじゃ、払い終わったときには立派な中古車だし。」
私は尋ねました。
「寄進するんじゃないですよ。 自分が使う為に買うんですよ。 前からホンダが欲しくて、ずっと悩んでたんだけれど、思い切って買う事に決めたんです。
悩んでいてもしょうがないですからね。」
悩んでいてもしょうがないですからね。」
「悩んでいてもしょうがない」のではなく、
「しょうがない事を悩んでいたんだろ。」
と思いましたが、私は口には出しませんでした。 彼は更に、こう言いました。
「ホンダは燃費がいいから、ガソリン代も節約できるし。」
「ガソリン代の節約」より、
「出費を抑えるべきだ」
と思いましたが、やはり口には出しませんでした。
書類を見ると、利子計算だってされています。
「そこに書いてある通りだよ。」
「他に、何か払う必要のあるものありますか?」
「あとは自動車登録税が別に必要なくらいだよ。」
「そうか、やっと新車が買えるんだな。 来月、早速、契約だ。」
そう言って彼は喜び勇んでその場を離れてゆきました。
「先週、借金が返せないって、副社長に泣いて訴えていたんだよね、彼?」
「私も奴が何考えているのか、さっぱり分からないです。 口をきくのも嫌になっちゃって。」
人の良い経理課長が珍しくちょっと立腹気味に呆れています。
でも、新車を購入した事で、少しは別れた彼女の事を忘れられるなら、彼にとって、それはそれでいい事なのかも知れない、そう考えました。
タイの会社は何処でもそうですが、仕事中、上司の目を盗んでネットサーフィンやメールをして遊んでいる者がたくさんいます。 私もその1 人です。 ある日、FacebookでC.P.君のウォールを見たら、別れた彼女に向かって、
「今でも、あなたの事を想っています。」
「あなたの事を考えると、今でも胸が苦しいです。」
「どうか幸せになって下さい。 今はそれだけです。」
「思い出をありがとう。」
そんな事を毎日のように書き綴っています。 最初は
「まだ、忘れられないんだな。」
そう思いながら黙って見ていました。 でも、1ヶ月経っても、2ヶ月経っても相変わらずそんな事を書き続けている彼に、
「オイ、見苦しいから、その辺にしとけよ。 自分で自分の傷口広げても仕方ないだろう」
そう感じました。
最近では元彼女への直接的なメッセージはなくなりましたし、毎日のように更新していませんが、それでも「愛」がどうだの、「恋」はどういうものだの、まるで
「愛のメッセンジャー」
みたいな投稿をたまにしています。
タイには、こんなよく分からない男がたくさんいます。
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