2011年3月7日月曜日

爪が黒い (トラウマ)

 翌日、一緒に喫茶店に行った女性がトレーニングを終えて帰ると、

 「昨日はどうだったんだ?」

 とK.A.先生が尋ねてきました。 どうだったのかと言われても、話しかけてきた事に答えているうちにお店が閉店の時間になったので、駅まで送っただけでしたし、ありきたりの世間話をしただけだったので、何を話したのかもあまりよく覚えていませんでした。 別に私は無口な訳ではなく、JA研究所のトレーニングでもK.A.先生の講演会でも、私は結構話をしていました。 所が一旦「女性」として意識してしまうと、途端に話が出来なくなるようです。 そんな自分の性格をはっきりと意識し出したのもこの頃です。

 呆れた顔をしながら、K.A.先生は昨日ちょっとだけ触れた「超えなきゃならない大きな壁」について話して下さいました。 要は男にとっても女にとっても、「異性」の存在が如何に大事な存在であるかでした。 落ち込みそうになったり、くじけそうになったとき、「この人の為に」と思えるか思えないか、そんな対象がいるかいないかは「乗り越えられる壁」の高さに最も大きな影響を及ぼすのだそうです。 さらに、成長する時にはその勢いも付くし、スランプ等からの回復も早いそうです。 仕事がが出来る人は意識的にか無意識かに拘わらず、こういった面で自分をコントロール出来ている。 付き合う付き合わないに拘わらず、気楽に食事をしたり話をしたり出来る関係の異性の友人がいない者は、精神的に「病みやすい」傾向があり、特に人間関係に悪影響が出やすいのだそうです。 この世に男と女しかいないのに、女性とは良い人間関係を築けない時点で、この世の半分の人間と良い関係を築けない事になる。そして私は、女性次第で精神状態が極端に変わるので、昨日紹介してくれた女性と付き合うか付き合わないかは別にして、もっと「女慣れ」する事で、気に入った女性と出会ったらば、自然と交際できるようにならなければならない。 中高生、遅くとも20歳前後迄にそういった体験を積んでいるのが普通であるのに、私はそういった事が全く出来ていなかったのだから、これから急いで「学習」する必要がある。 もしもこれを疎かにしていると、今後壁にぶつかった際、精神的脆さを抱えている私はとても乗り切れないのだそうです。 おまけに身なりに気を遣わない私は「第一印象」が非常に悪く、「きっかけ」の段階で既にチャンスを失っているから、昨日紹介してくれたアパレル関係の年上の女性は、私に「うってつけ」なのだとも言われました。

 言われてみれば、精神的に弱く、仕事面で成長するに従って「自信」を付けてきたので、その弱さをカバー出来ていましたが、K.O.ちゃんに振られた事でこれほど落ち込むのは、精神的に脆い証拠だと妙に納得させられました。

 その数日後、先日一緒に喫茶店に行った女性と、再度同じ喫茶店に行きました。残念ながら、これといった楽しい話題がある訳でもなく、彼女が投げかけた質問に答えだけの「面接」みたいな時間が流れ、閉店時間と共に終了となりました。

 帰路、自分はなんて面白味に欠けた男なんだろうと、気が滅入ってしまいました。 あの女性もK.A.先生に勧められたから一緒に喫茶店へ行ってくれたけれど、きっと詰まらなかっただろうな。 K.A.先生立って私を成長させる為にあれこれと考えて下さっているのに、それに全く応えられない。 そう考えると、申し訳ないやら、情けないやら、やり切れない思いで胸が一杯になってしまいました。

 その後、この女性は私の事で、K.A.先生と話しをしたそうです。 そして先ず、もうちょっと身だしなみに気をつけて欲しい。 特に手が汚れていて、その中でも爪が黒いのが気になったのだそうです。
 手が汚れているのは私も分かっていますが、「感覚」を重要視して仕事をしていた私は、よほどの事がない限り手袋を用いませんでした。 補修工事では「見えない」場所を「手探り」しながらの作業が非常に多かったですし、埃まみれになる事も珍しくありませんでした。 又、トタン板を必要な形に加工する為に、板を切断し、折り曲げてゆきますが、どうしても「鋏」を入れて切断しないと加工できない部分が生じ、その部分を「半田」や「コーキング剤」で「目止め」しないと雨水が漏れてしまいます。 昔は「半田」を多用していましたが、現在では材料の多様化や作業性などから「コーキング剤」が主流になっています。 このコーキング剤が手につくと、洗っても簡単には落ちません。 特に爪に入ってしまうと、「洗う」のではなく「ほじくる」事を何度も繰り返さないと取れません。 見た目はよくありませんが、この仕事で食っている以上、綺麗な手にする為に仕事の能率や感覚を犠牲にする気はありませんでした。
 K.A.先生には出来る限り気を付けるけれど、サラリーマンのような手を望むのであれば、私はその女性と交際する事が出来ないと伝えました。 いくら人並みに女性を口説く事が出来ない「奥手」な私でも、手の汚れない「新しい仕事」で一人前になるよりは、新しい女性を見つける方が何とかできそうな気がしたのです。


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