2011年3月6日日曜日

お姉様 (トラウマ)

 その女性と話が終わると、K.A.先生は私の方に近付き、

 「おい、今、△△さんと話を付けてやったから、お茶でもしてこい。」

 「はぁ〜っ !?」

 「はぁ〜じゃない、鈍い奴だな。 お前の為に、デートの話をまとめてやったんだ。 お前好みの美人だろう!

 そう言われて振り返ると、確かにきれいな女性でした。 よく考えたらその女性とは、組になって行うトレーニングを何度も一緒にやっていますし、トレーニング中に話をした事もありました。 でも、美人だなと意識したのは、この時が初めてでした。 頭の中はK.O.ちゃんの事で一杯で、他の人が全く目に入っていなかったようです。 こんな美人に気が付かないなんて、何て失礼な奴なんだろうと、イタリア人的発想が頭をよぎりました。

 「四谷まで行けば未だやってる店があるから、ちょっとお茶でもして来い。」

 「えっ、いきなりですか?」

 「いきなりも何もあるか! せっかく今、話を付けたのに、今行かないでどうする! 後にしたら、気が変わるかも知れないんだぞ!」

 「行って、何話せばいいんですか?」

 「又、そんなな事言ってる。 いいか、お前は直ぐこの先、もう1つ超えなきゃならない大きな壁にぶち当たるんだ。 その時、超えられるかどうかは、女にかかっているんだ。 でも、今のお前じゃ、まともな女は相手にしてくれないだろう。 お前みたいに自分から何も出来ない奴は、姉さん女房の方がいいんだ。 彼女は丁度、2つ年上だし、おまえ好みの目がぱっちりした美人だろう。 それにアパレル関係だから、服装に全く無頓着なお前は少し教えて貰った方がいい。 いくら何でも今のままじゃあ、人の上に立ったらみっともないだろう。 とにかく、男と女はどういうものか、暫く、お姉様に教えて貰え、分かったか!」

 「で、何を話したらいいんですか?」

 「全く、お前はうちに来て、何をして来たんだ。 馬鹿でどうしようもなかったのが、食べ物変えて、考え方変えて、親父から仕事を教わって、親父を超えたから腕のいい職人にも見込まれたんだろう! これから人の使い方を覚えて、自分が親方になって仕事をしていくんだろう! 何度も同じ事を言わせるな! さっさと行ってこい。」


 K.A.先生のやる事はいつも唐突です。 

 「人は常に変化する環境に適応してゆく事で進化してきたのだから、対応出来ない奴は絶滅するだけだ。」

 いつもそう口にしていました。 そして、私もそのようにして来たつもりでしたが、女性の事だけは全く対応出来ずにただおたおたしているだけでしたから、このまま放っておけば間違いなく「絶滅種」になってしまいます。
 追い立てられて四谷にある喫茶店まで行きましたが、自分から話題を切り出す事は殆どできず、聞かれた事に答えているだけでした。 ただ、強く「意識」していた訳ではないので、K.O.ちゃんの時のように緊張しっぱなしではなかったからだと思いますが、胸が苦しくなる事はありませんでした。
 向かい合って座り、改めて見ると、目がぱっちりしていて服装のセンスもいいし、とても落ち着いた「大人」の雰囲気を漂わせた女性でした。 気取った所もなく、「さりげなさ」を持っています。 ですがこの時、私の頭の中からK.O.ちゃんを消す事が出来ませんでした。 元々女性と話をするのが苦手な上、K.O.ちゃんの事を考えているから「上の空」な訳ですから、この女性にとっては詰まらない話し相手だったと思います。


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