その日も雨で仕事が休みだったので、私はY.G.塾へ顔を出しました。 事務所へは様々な人が訪れ、スタッフの方と暫く話をして帰って行きます。 昼過ぎにK.N.さんが見えました。 彼はY.G.塾でちょっとした有名人でした。 在日韓国人である事から幼い頃にかなり酷いいじめに遭って、いつしか心を固く閉ざすようになってしまい、「真我開発講座」を受講しても貝のように閉じ籠もったその心はなかなか開かず、僅かに開くまでに数回の受講が必要だったそうです。 彼はその後も受講を続け、真我を開いてゆくうちに友人もでき、性格も明るくなり、人生が転換してきたので、Y.G.塾の月間刊行物にも体験談が載っていましたし、「無料セミナー」に参加したときには毎回のように体験談を発表していました。 その体験談は決して饒舌なものではありませんが、辛かった過去、真我とのの出会い、そして人生の転換に対する嘘偽りのない生の声は胸を打つものがありました。 そして「真我を極めるまで受講し続ける」と誓い、機会あるごとに受講して当時十数回セミナーを受講していたのです。 「いつか、1度でいいからK.N.さんとゆっくりと話しをしてみたいな。」無料セミナーで体験談を聞く度にそう思っていました。
スタッフとの打合せが終わったのでしょう、私がボーッと座っている応接間に、K.N.さんがやって来ました。 ですが、私を見るK.N.さんの視線に何か冷たいものを感じ、私から声をかけられませんでした。 彼は何度も私を見つめ、そして視線をそらします。 どうも何か言いたい事があるようですが、話しかけづらい雰囲気が漂っているので、黙っていました。 それは私には長い時間に感じられましたが、実際にはそれほどではなかったのかも知れません、ついにK.N.さんの方から話しかけてきました。
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