私にとっては、お茶を飲むよりも、この場所からさっさと立ち去りたかったので一緒にさっさと出て行きました。 帰り道、軽自動車を運転しながら、
「失敗だ! 一生の失敗だ! △△君(私の事)、女だけはちゃんと選べよ。 間違えると俺みたいに後悔する事になるぞ!」
「大丈夫だよ。 言われなくても、K.I.さんの奥さんみたいな女だけは絶対に選ばないから。 そんな事より、あんなの連れて実家に帰ったら、両親、兄弟、親戚、仕事関係、誰も良く思わないぞ。」
「分かっているよ。」
「いや、分かってないよ。 あの女一人のせいで、家族や仕事の関係者みんなが迷惑するのに、いつも何も言わないでわがままさせ放題じゃないか。 おまけにK.I.さんも周りから馬鹿にされるんだよ。」
「もう、馬鹿にされているよ。」
他人夫婦の事ですが、あまりにも目に余る事だったので、いつも思う事をはっきりと言いましたが、彼にとって唯一の「悩みの種」だったようです。 DSに戻り、道具を片付けて軽自動車を車庫に入れ、K.I.さんと飯を食いに行きました。 家に入りたくても、慌てて出てきたので、鍵を奥さんの実家に置いてきてしまったのです。 いつもなら一緒に食事を採っても、仕事の事が頭から離れずに、以前見た何処のお寺の納めがどうだったとか、誰の仕事は何処がすごいとか、これからの板金業界はどうあるべきかと目を輝かせながら語るのですが、この日だけはさすがに、奥さんの事で頭が一杯だったようです。 一生懸命話題を探して話をするのですが、いつものように目が輝いていませんし、話も弾みません。
「今日はそろそろ帰った方がいいみたいだな。」
「ちょっと場所を変えてゆっくりしようよ。」
そうは言っても、私もK.I.さんも、酒の類は一切飲めないので、24時間喫茶でも行かない限り時間がつぶせません。
「そろそろ、奥さん帰ってきている頃でしょう、早く帰って喧嘩の続きをして、さっさとケリを付けないと、明日現場が遠いんだから、仕事が大変だよ。」
「う〜ん、○○子の奴め〜。」
「今日のはいくら何でも目に余るから、ぶっ飛ばしてでも謝らせなけりゃ、もっと増長するよ。 ガツンと言ってやりな。」
「当たり前だよ。 いくら何でも今日の事は許せる訳ないよ。」
「じゃあ、頑張って喧嘩してね。」
その日はそれで別れました。 後日、顛末がどうだったのかと尋ねましたけれど、彼の口から力強い言葉を聞く事は出来ませんでした。 それどころか、
「性格的に問題あるかも知れないけれど、○○子は結構きれいだろう?」
とのろけていましたから、何か特別なきっかけでもない限り、この二人の関係はこの先もずっと続くのだろうなと思いました。
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